何かを極めようとする人、その努力を惜しまない人。
そういった方って素敵ですよね。
社会に貢献できる立派なものから、趣味の範疇でも何でもいいんです。
オレはそういう何かに突出している方に尊敬の念を抱くんですよね。
申し遅れました。こんばんは、氷太です。
でも周りにいませんか?
求めてないのに『通』ぶる奴らって。
『通』ってそもそもどんな意味?
この単語、グルメ番組とかでよく出てきますよね。
「これが通の食べ方」「これが通の楽しみ方」みたいな。
『通』が持つ本来の意味は特定の分野に精通している事を指すようです。
粋とかいなせとか、そういう言葉が持つ意味とも少し違うんですね。
ちょっとかっこいい大人の厨ニ病みたいなもんかと思ってました。
自称『通』の痛さ
これは長野の蕎麦屋に上司と一緒に行った時の話。
長野で有名な蕎麦屋さんがあるという事で、昼食をそこで取ろうという話になりました。
その上司は、普段から味にうるさい系の人です。
自分の舌にかなりの自信を持っているような人です。
ちなみに三ツ矢サイダーゼロが大好きです。
それに比べて自分はかなりの味オンチ。
調理が不得意な方の料理でも大体美味しく食べられるような人間です。
かなりの確立で
「何だコレ食えたもんじゃない!!」
と食べる事を放棄する上司に
「要らないならオレが美味しく頂きます(ジュルリ」
という流れが生まれる関係性です。
あれ・・・?相性良いのかな・・・?
そしてその上司はグルメに全く興味も知識もないオレに、ありがたいご高説をしてくれます。
例えば
「そばを頼む時は1つじゃなくって1枚だ!」
「5割そばと10割そばの違いはだな・・・」
とかですかね。
自分の知らなかった、これからも知ることのなかったであろう一般常識や雑学を教えてくれるのは大変ありがたいです。
ただ・・・、ただね。
味オンチのオレに『通』ならではの食べ方を強要する事は物凄くストレスなんですよ。
長野の蕎麦屋に言った時の流れ
上司はざる蕎麦大盛りを頼みました。
「ここは天ぷらも旨いんだぞ」との事だったのでオレは天ざる蕎麦を頼みました。
「いや~、オレうどん食いたいんですよね~」って言ったらどうなるんだろう。人生終わるのかな?
だが一息付く暇もなく、アレがやってきました。
蕎麦湯だ。
あ・・・。
コレ見た事がある・・・TVで見た事があるぞ!!
確かレポーターが最後につゆに入れて飲んでた代物だ。
でも店員さんがお茶代わりのように持ってきているんだが・・・・。
っていうか前に上司に教わったような気がする・・・。
食前、食後どっちに飲むんだっけ・・・!?
いいや喉乾いたし、上司の分も入れたれ!!
ってアレ・・・上司さん?
私の行動は不正解でしたか・・・?
・・・・・。
ありがとうございます、飲んで良かったんですね!
そしてオレの天ざる蕎麦が先に運ばれ、上司のざる蕎麦が来ない・・・。
蕎麦屋に聞きたい。
どう考えても天ぷら蕎麦の方が時間がかかると思うんですが・・・。
上司は「乾くから先に食べなさい」と言ってくれるが、味オンチのオレにとって乾いていようが湿っていようが、味の違いが分からない。
それに部下として、部下としてのマナーに従うのがベストだ。
今日はこの魔法の言葉を使う時が来たようだ。
「あ、自分乾いた麺が好きなので。」
完全に頭おかしい人の発言です、どうもありがとうございました。
つゆが冷たくなりかかっている頃にようやく上司のざる蕎麦が来た。
ちょっと後悔した、食っちまえば良かった。
ここで頂きま~す!の時間。
薬味をつゆに~・・・と正にその時。
上司が言葉を発する。
「オイオイ、薬味はつゆに入れるんじゃなくって具材に載せるんだよ!蕎麦の香りが消し飛ぶだろ?」
え・・・?そうなの?
っていうか蕎麦に香りってあるんだ・・・?
そして上司が言葉を続ける。
「ここの蕎麦の食い方はな、まず蕎麦を何も付けずに食うんだよ。ホラ食ってみ?」
あ・・・ハイ、分かりました。
ズルズル~・・・・。
・・・・。
あの、味しないんですけど・・・。
そんな事言えるハズがない。
あ・・・でもちょっと蕎麦の香り?がするのかな・・・。
「蕎麦の香りっていうのが分かったような気がします」
と答えると
「そうだろそうだろ!これがこの店の『通』の食べ方なんだよ!」
と一気に嬉しそうにする上司。
ちなみにここで断っておきたいのが、この上司はオレの味オンチっぷりを凄く理解してくれてはいるという事。
会社行事でバーベキューした時に、社長が取り寄せてくれたA5等級の牛肉を
「社長、このお肉って牛肉ですか?豚肉ですか?鶏肉ですか?凄く美味しいですね!」
と言って場を静まり返らせたレベルのオレを1番理解してくれている人だと言ってもいい。
オレの多少の進歩が見られた事が嬉しかったのか
「次は蕎麦を塩で食うのがここの『通』なんだ!」
と仰る。
・・・え、なんで?つゆがあるじゃんつゆがさ。
とは勿論言えず。
言われるがまま塩を付けて食べる俺。
「どうだ!?」
とキラキラした目で問いかけてくる上司。
どうもこうもねーよ、塩味の蕎麦だよ。
普段なら「分からないっす」って言えるけど、そのキラキラした目は反則だよ・・・。
ガッカリさせたくないよ・・・。
とはいえ嘘を付くのが非常に苦手な性格のオレ。
頭をフル稼働させて全身系を舌に集中させる。
これだ・・・これしかない。
「やっぱりこの塩も、蕎麦に合わせた塩を使用しているんでしょうか!?」
秘技☆論理のすり替えだ。
だってわかんねーもん!
それに美味しいですなんて月並みな回答、望んでないんでないんでしょう?
とはいえこんな返答だって、苦し紛れでしかない訳で・・・。
何でオレはこんなポンコツなんだろ・・・と申し訳なさそうにしていると
「・・・・分かるか!?(ガタッ!」
と前のめりになるくらい喜ぶ上司。
嘘でしょ!?
いやいやいやいや・・・ほんと勘弁してよ~・・・。
何でこんな罪悪感で一杯にならなきゃなんないんだよ~・・・。
この後も、麺に付けるつゆはどれくらいで~とか、箸で持ち過ぎないのがうんたらかんたらとご指導ご鞭撻が並ぶ。
そもそも何でそんな『通』の食い方しなきゃいけないんだよ。
自分の食べたいように食べたらいいじゃん。
麺につけるつゆとか、ドップリ付けた方が絶対旨いって!!
そして食べ終わってからやたら上司が「この店の『通』は~」という言葉を使うのが気になりはじめた。
そもそもその店店の『通』の在り方って、どこからどのように伝承されていくのか気になった。
「今日はありがとうございます、上司さん。良いお店ですね。ここよく来られるんですか?」
「いや、2回目だけど?」
あ・・・そうなんですかハアッ!?
ハアアアアアアアアアアアアア~~ン!?
2回目・・・だと!?
2回目で・・・今日散々この店の通の在り方を言っていたのかい?
いやどの蕎麦屋でも通用するようなマナーなのかもしんないけどさ。
でも2回目!?
2回目で『通』を説いちゃうの!?
「え・・・でもこのお店の『通』の在り方に凄く詳しかったですよね?」
「ああ・・・じゃ○んに書いてあった。」
ちょっと待ってクミちゃん!!
いくらなんでも新しいガム食べすぎでしょう!?
いや・・・何も問題はない。
別に問題がある訳じゃない。
ただ『通』っていうのは、誰しもがより楽しめるような在り方の事を指すものじゃないの?
その物事に精通したからこそ発見した、新しい創造を指すものではないの?
ただ単にグルメレポートを鵜呑みにして、自分の身に染みてないような事を他人に強制する事ではないんじゃないか・・・?
これじゃ只の自己満足じゃないか、通ぶっているだけじゃないか。
突き詰めて言うならばやっぱり只の厨二病の大人版なだけじゃないか・・・。
これこそ最も『通』の品格に程遠い行為なんじゃないだろうか・・・。
オレは決意した。
旨さも分からないのに、背伸びして蕎麦に塩付けて食ったりしない。
つゆには勿論どっぷりと浸して食べる。
『通』な食べ方、なんてオレはいらない。
オレが1番美味しいと思う食べ方で食べる。
それがオレだけのオレだけにしか分からない『通』な食べ方なハズだから。